哺乳類や鳥類は肺呼吸。だから仕組みはみんな同じと思っていませんか?
実は鳥類の呼吸は一味違います。
異なる呼吸様式を知り、「呼吸」の面白さを感じていただけたらと思います。
一般的な哺乳類(ヒト)の肺呼吸
一般的に呼吸に関連する器官として、口や鼻から気道と呼ばれる空気の通り道があり、その先に肺が存在する。
肺は肋骨と横隔膜と呼ばれる筋肉に囲まれており、これらが動くことで肺は伸縮し空気を取り込むことができる。
さて、私たちは空気を口や鼻から吸い込み、肺に取り込んで呼吸をしている。
肺に到達した空気から血液を介して酸素を体内に取り込み、同時に体内で生じた二酸化炭素を排出して吐き出すというのが一般的に知られているかと思う。
つまり、「吸う」と「吐く」を順番に行っておりコレらが同時に行われる事はないはずである。
そりゃそうだと言われそうだが、ココが鳥類と哺乳類の大きな違いなのである。
鳥は「吸う」と「吐く」を同時に行っている
少し語弊のある言い方かもしれないが、その理由をお話していく。
まず前提に置いて欲しいのが、
「鳥類では息を吸っているときも吐いている時も、常に新しい空気を肺に届ける仕組みが備わっている」ということだ。
これを実現するのが「気嚢 (きのう)」と呼ばれる器官だ。
「気嚢」は袋状の形をしていて肺の前後にいくつか備わっている。
(「空気を溜め込む袋」をイメージしていただけるとわかりやすいかもしれない)
吐く息を溜めておくモノを「前気嚢」、吸い込んだ空気を溜めておくモノを「後気嚢」と呼ぶ。
吸い込んだ空気は「肺」と「後気嚢」に運ばれ、吐くための息は「前気嚢」に運ばれる。
これらの存在がなぜ「吸うと吐くを同時に行う」に寄与するのか。
まず、空気を吸い込むと肺、および後気嚢に空気が送り込まれる。
肺に取り込んだ空気は酸素を取り込み、それ以前に肺にあった空気(二酸化炭素)は前気嚢に押し出される。(古い空気は前気嚢に溜め込まれる)
前気嚢に溜め込まれた空気を吐き出すと同時に、新鮮な空気が後気嚢から肺に送り込まれていく。
これが「吸う」と「吐く」を同時に行う仕組みである。
このように無駄なく呼吸運動ができるため、高所や長距離の飛行が可能であると言われている。
ひとりごと
学生時代から人体の勉強をしていると他の生物への興味も沸々と湧いてくる。
今回のような内臓機能の違いはもちろん、骨格から個体独特の動きをイメージするのも面白い。
他の生き物について調べる度に生物の多様性と適応能力に圧倒される。
また、どんな仕組みで生きているのかに触れるとその生き物への愛着も一段と湧いたりする。
決して全てが合理的ではなく、それぞれ独自の身体機能の生物を見ていると人間社会の同調圧力なんていう言葉もどこか他人事のように思えてくるから不思議だ。
余談ではあるが、解剖学や生理学を学ぶ学生にも人間以外の生物について調べることをオススメしたい。
ちょっとしたエッセンスになり、普段の学習をより深く理解する助けになる、かもしれない。