「痰はなぜ増える?」「排痰に必要なことって?」「痰を出しやすくするには?」痰に関する『なぜ』をわかりやすく解説します

リハビリ

今回は医療的ケアとしても多くの場で行われる「排痰(はいたん)」についてお話します。

ざくっと言えば痰(たん)を口から出す、もしくは吸引で吸い出すといった方法が一般的です。

痰は良くないもの”、”痰を出すのは大切”という認識は広く持たれていると思います。

しかし、そこには多くの『?』があるのではないでしょうか。

その『?』が少しでも解消されると、日々のケアで多くの気づきが生まれ、不安も減るのではないかと思います。

まさ
まさ

SNS活動やオンラインセミナーを始めて、たくさんの方から日頃の疑問をいただくようになりました。

今回はその内容を中心にお話したいと思います。

【こんな方にオススメ】

・ケアの疑問を無くしたい
・医療者の説明がイマイチわからない
・漠然とし
部分をきちんと理解したい
・排痰を効率的に行いたい
・ケアの質を上げたい

など

排痰については別の記事でもお話しています。
ぜひ合わせてご覧ください

解説】どうして痰が出しづらくなるの?排痰のための基礎知識

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そもそも痰って何?

痰【専門用語としては喀痰(かくたん)】とはそもそも何か。

これは気管支(気道)から出る分泌物の塊(かたまり)です。

【気管支】
喉(のど)〜肺まで続く空気の通り道

もちろん健康な人でも分泌されていますが少量であるためほとんど認識されません。
つまり、自覚するだけ痰が増えているときはある種で病的と見ることができます。


痰はどうやって出てくる?

私たちは息をするとき、空気だけではなく大気中の浮遊物質(異物や細菌など)も吸入しています。

これらを排除するため活躍するのが、気道からでる粘液線毛(名前の通り「毛」のような組織)の2つです。

この気道粘液で物質をまとめて(キャッチして)、線毛によって喉元まで押し出してくれます。

痰はなぜ増える?

さて、これまで話をした通り痰は正常でも常に発生し体のメカニズムにより体外へ排出されたり、そのまま飲み込まれてしまいます。

問題は、その許容範囲を超えて肺の中に溜まったときですよね。

この痰が異常発生する状態として代表的なものに「誤嚥」や「肺炎」などが挙げられます。

つまり、これらが原因で体内では「炎症」が起きてしまいます。

炎症などが起こると前述した粘液の量が増えたり色が付いたり(膿性)、ネバネバになったり(粘稠:ねんちょう)あるいは出血が混じった痰となります。

排痰のために必要なこと

お家で積極的に行って欲しいことは、「換気の改善」「加湿」です。

おそらく加湿に関してはどの家庭でも気をつけて行っていると思います。

それでは「換気の改善」とは何か!これは体内と体外の空気の出入りについてです。

要は「肺にたくさん空気が入るようにしましょう」ということです。

肺の中に溜まった痰は呼吸によって吸い込む空気の流れによって動きます。

つまり、空気の流れが少ないと上手に痰が喉元の方まで上がってきてくれない事になります。

(簡単なイメージ図はコチラ)

男の子がフゥーっと息を吹いているのが換気(空気の流れ)とします。
これが弱ければ丸い玉(痰)は上手に転がりませんよね。

また、この床面の状態が加湿の有無を表しているとします。
床面が乾燥してザラザラしているとどうでしょうか。
当然、床面が滑らかではないと玉(痰)は上手に転がらなくなります。

玉を上手に転がすためには、息をフゥーッと強く吹き床面が滑らかでないといけません。

つまり、

痰を上手に出すには、換気を改善し十分な加湿が必要という事になります。

痰を出しやすくするためには?

空気をたくさん取り込むことは排痰のためにとても大切なことです。

そのためには「関節の動き」と「筋力」、「姿勢の管理」が重要となります。

ここではリハビリの目線で大切な3つの項目についてお話します。

関節の動き

息をするためには肋骨(ろっこつ)をはじめとした胸が大きく膨らむ必要があります。

周囲についている筋肉が強張ったり、側弯などが原因で胸の動きがジャマされると上手に開かなくなります。
そうなると吸い込む空気の量は不十分となり、排痰に不利な環境が出来上がってしまいます。

そのため、リハビリでは「呼吸介助」といって、胸を直接動かし固まらないように介入するケースが多くあります。

呼吸介助についてはご家庭で簡単にできる方法をオンラインセミナーで紹介しています。

オンラインセミナーについて

筋 力

当然ですが、息をするにも筋肉は使います。

意識的に呼吸をコントロールできる場合では深呼吸をしたり、強く息を吐いたりなど呼吸のトレーニングも排痰には有用です。

例えば歌ったり、ストローを吹くことを遊びに取り入れたりですね。
保育士や教職員の方はぜひこれらを考慮した内容を取り入れてみるのはいかがでしょうか。

意識的に呼吸のコントロールができない場合、呼吸する筋肉が上手に働くようにコントロールする必要があります。

筋肉の緊張が高い子であれば、「マッサージ」や「ストレッチ」、「お薬」などで調整してあげる必要があります。

呼吸を楽にする筋肉についてはコチラで詳しくお話しています。

【自宅でできる】 呼吸を楽にする方法 ①

【自宅でできる】 呼吸を楽にする方法 ②

姿勢の管理

姿勢はいろいろな種類があります。

「仰向け」「横向き」「うつ伏せ」「座位」「立位」など。

排痰だけでなく、褥瘡(じょくそう:床ずれ)のためにも一つの姿勢だけでなく、いろいろな姿勢をとることが推奨されています。

ここで知っておいて欲しいのは「仰向け(上向き)」の時間が長い場合は注意が必要ということです。

一見、「仰向け」って一番楽そうに見えますよね。

しかし、これが意外な落とし穴です。
背中を床に押し付けるこの姿勢は呼吸を浅くしてしまうんです。

まず、”背中の全面が床に押さえつけられている”、さらに”お腹の内臓が肺を下から押し上げてしまう”姿勢なんです。

なので、もし痰が多い子で日中に「仰向け姿勢が多い」という場合は「座位」など体を起こす時間を作ってあげることをオススメします。

仰向け姿勢の弊害についてはコチラで詳細をお話ししています。

仰向け姿勢ばっかりが良くない理由。

まとめ

排痰って意外とそのメカニズムが知られていません。

細かく話すとキリがないテーマなんですが、まず知っておいて欲しい内容についてまとめてみました!

また、深い呼吸は排痰だけに効果があるわけではありません。

実は自律神経全身の血液の流れに対しても良い効果があるんです。

知ってるようで知らない、そして誰もが行う「呼吸」について

皆様の「?」が少しでも解消されれば幸いです!