今回は疾患の特徴にフォーカスしています。
また、疾患別に様々なリスクがあるためホームケアを行う際にもそれぞれ注意が必要です。
意外と原因や症状がクリアになっていない方もいるかもしれません。
原因がわかると、「なぜそんなリスクがあるの?」ということもわかりやすくなります。
ぜひ最後まで読み進めてください。
※参考文献は最後に載せてあります。気になる方はそちらもチェックしてください。
概要
気管・気管支軟化症とは
気管・気管支とは喉から肺にかけて存在し、いわゆる空気の通り道の役割をしています。
気管・気管支軟化症とはこの空気の通り道が狭くなり、呼吸を妨げてしまう病気のことを言います。
代表的な症状
主な症状は以下、
・持続的に喉元がゴロゴロする
(呼吸、飲み込み、泣いている時など)
・泣いた際にチアノーゼが生じる
(酸素不足により唇や指先が青紫色を示す)
・肺炎などの呼吸器感染症
・犬吠様咳嗽
(犬の吠え声の様な乾いた咳)
・無呼吸
などが挙げられます。
また、気管・気管支軟化症では、特に息を吐く時に症状が出やすくなります。
主な原因
通常、気管・気管支は画像のように、これらは軟骨で覆われています。
そのため、呼吸によって気管や内部の圧が変化しても、通常はその形を保つことができます。
気管・気管支軟化症はこれら軟骨の脆弱さ、気管(支)の発育異常や周囲の血管による圧迫などが原因とされています。
多くは身体の成長とともに症状が改善していきますが、そうでない場合は医師による治療が必要となります。
(栄養や睡眠、通常の呼吸に支障をきたす肺炎を繰り返す場合など)
どうして苦しくなるの?
「症状」の項でお話したとおり、様々な場面で空気の通り道が塞がりやすく上手に息をすることができなくなります。
そのため、
・浅い呼吸になりやすい
・呼吸に関わる筋肉の緊張が高くなる
・筋肉の強張りで胸が硬くなる
といった状態になります。
特に、浅く早い呼吸は急な圧の変化を生むため、余計に空気の通り道が潰れやすくなってしまいます。
当然、空気の出入りもジャマされ、痰が肺に溜まりやすくなります。
※痰は空気の通り道に存在します。当然、痰が多ければ空気の通り道をより塞いでしまうということになります。
これらが組み合わさり、いわゆる「苦しい」という状態を作り出しています。
また、乳幼児では胸が柔らかく脆弱です。
そのため、胸の周りが固くなったり気道(空気の通り道)が狭くなることで容易に身体へ負担がかかるため注意しなければいけません。
お家で出来ること・出来ないこと
それでは、リハビリの観点からケアとして出来ること、出来ないことを分けてみましょう。
つまり「気管・気管支軟化症」そのものは医師による内服治療や外科的な治療の対象となります。
理学療法士としてはイラストの様に「その他の除外できるもの」を外していくことが大切だと思います。
例)「苦しい」を作る原因がA・B・C・Dと4つ存在するとします。
このうち、「AとCなら軽くしてあげられる」とすればどうでしょうか。
問題点を一つでも外すことができれば「苦しい」を減らすことができます。
特にご自宅でケアできる対象となるのは、筋肉の強張りや過剰に早い呼吸、痰(たん)を出すことについてです。
特に空気の通り道を遮り、息苦しさを作り出しているのは痰です。
ケアを行う方にとって身近な「排痰(痰を体内から出すために行うケア)」ですが、そのメカニズムは意外にもあまり知られていません。
これをイメージできると普段のケアは確実にレベルアップすると思います。
具体的なホームケア
排痰と姿勢の管理(ポジショニング)
痰を出すためには空気をしっかり肺に入れなければいけません。
そのためによく挙げられる方法が「体位排痰法」です。
要は痰が出やすく空気が入りやすい姿勢を作りましょう、というものです。
おそらく、病院でも「仰向けばかりではなく色々な姿勢をとらせてあげてくださいね」なんて言われたことがあると思います。
このように横向き姿勢や座位姿勢など姿勢を変えることで肺の中でも空気の入りやすい場所が変わります。
(どこに痰が溜まっているかで姿勢を変える)
胸を包み込むように触れたとき、呼吸に合わせてゴロゴロするような振動を感じます。
このゴロゴロの正体は呼吸によって動いている分泌物(痰)です。
基本的にはこのゴロゴロが上に向くように姿勢を変えてあげることで痰が出やすくなります。
例)右の脇の下がゴロゴロしている→右側が天井を向くように横向き姿勢をとる
さらに、楽な姿勢でないと緊張が抜けず深い呼吸ができません。
枕の高さやクッションを当てる位置など、その子にあった方法を医療スタッフと相談して行う必要があります。
※(注意すること)※
苦しそうだとよく「肩枕」のように首を反らして気道確保するような姿勢を進める記事もありますがこれには注意が必要です。
気管・気管支軟化症の場合、これは喉が伸ばされてたり、身体が反るような緊張を助長し余計に苦しくしてしまう場合があります。
呼吸介助と注意点
排痰を行う際、よく「呼吸介助」という方法が紹介されます。
(呼吸に合わせて胸を圧迫して呼吸を補助する方法)
ただし、軟化症の場合は注意が必要です。
気管・気管支軟化症の場合、息を吐く際に気道が潰れやすいという特徴があります。
つまり、安易にこの方法を実施すると過度な圧迫により余計に気道へストレスをかけてしまう場合があります。
必ず担当の医療スタッフによる確認・指導を受けて実施することをお勧めします。
コンディショニング
浅く早い呼吸により体の筋肉は非常に酷使されます。
特に呼吸に関わる筋肉をほぐしてあげることで、より効率的に呼吸ができる身体を維持することができます。
ただし、指圧のように“グリグリ”とマッサージする必要はありません。
手のひら全体で撫でるように優しくほぐしてあげてください。
強すぎる刺激は余計な緊張を助長してしまいます。
まとめ
今回は疾患の特徴を捉えた上で何ができるのかについてお話しました。
特にお子さんが小さい時はどこまで手を加えてもいいのかわからない点が多いかと思います。
必ず医療スタッフに相談しながら、お家でどこまで行えるのかアドバイスをもらうといいでしょう。
Ease Upでも呼吸にまつわるマンツーマンレッスンやオンライン面談を受け付けています。
気になる方はいつでもお気軽にお問い合わせください。
【参考文献】
(1)新津健裕: 小児の気道 critical airway management .INTENSIVIST Vol.4 ,2012
(2)前田貢作: 気道の先天性疾患 .小児診療2008
(3)金子断行: 重い発達障害をもつ子どもの呼吸機能 . PTジャーナル 第33巻 ,1999