こんにちは。
今回は”老人保健施設への就職”についてです。
いまだに多くの求人が出る分野ですが、学生の方からすると少し後ろ向きな意見が耳に入りやすい現場だと思います。
急性期病院への就職についてはコチラをご参照ください。
医療関係者でない人は、ご自身が関わるリハビリ職の経歴を見たときに
「こういう特色の場所で経験積んだんだな」と、その方の得意分野を推察していただけるかと思います。
職場としてのオススメ度
将来を見据えて、高齢者福祉の道に進みたいという気持ちがあれば十分にオススメします。
しかしながら、前述のように老人保健施設への就職については割とネガティブな情報を耳にするかと思います。
代表的なものに
”PTとしての成長があまり望めない”
と言ったものが挙げられます。
断言します。こんなのは嘘っぱちです。
一部のベテランはこう言った偏見を持っています。
なぜこんなことが言われるようになったのか。
(個人的な考察)
ひと昔前の施設では高齢者が自宅復帰せず、施設に入りっぱなしという現実が多くありました。
積極的に自宅へ帰そうともせず、リハビリも漫然とこなされている状況があったのではと思います。
このような過去から、老人保健施設への就職について、ネガティブな意見が聞かれるのではないかと思います。
ただ、現在は違います。
在宅復帰について国もきちんと評価をし、施設も在宅復帰のため積極的に動いている現場がほとんどです。
本来、老人保健施設とは病院と自宅の中継地点のはず。
なのでセラピストの心構えも回復期病院と遜色ないのです。
それでもやはり、畑が違えばなんとやら
ここからは私が考えるメリット・デメリットについてお話します。
メリット
①「生活を支える」という目線/スキルを獲得できる
これは総合病院と比べて大きなメリットだと思います。
昨今、在宅医療の重大性が叫ばれる中で大きなアドバンテージです。
というのも、施設という場所はそこ自体が利用者の方にとって生活の場となり、尚且つ在宅に向けての取り組みになります。
病院ではその人が行えないこと(後遺症などによって)をその人の身体能力でどう補うかという目線が強く働きます。
一方、福祉施設では+αで身体能力で補えない部分に対して環境をどう工夫するかという場面を多く経験します。
家具の配置や適切な福祉器具の設置、ご家族の強力や社会福祉制度など必要な社会資源を包括的に考えるプロである必要があります。
そう言った意味では医療の現場より幅広い知識が必要になると思います。
余談ですが、ガッツリ病院でしか経験ないですっていうPTは上記の社会資源について疎い人が多いイメージです。
②幅広い症例経験を積むことができる
これは学生の盲点になりやすいところです。
施設入所される方はその経緯が様々です。
働いたことがない人は「老人保健施設はお年寄りと楽しく過ごすところ。まったり仕事ができる」なんていう人もいますが大きな間違いです。
前述したように、様々な経緯で人が集まるので病気や障害は本当に様々です。
例えば、基本的に整形クリニックでは骨折や関節症などの整形疾患、回復期(リハビリ病院)では脳卒中と大腿骨頸部骨折の方が多くを占めます。
老人保健施設はこれらの枠にとらわれず多種多様な方々がいらっしゃいます。当然、様々な医療的にも幅広い症例を経験することになるでしょう。
③PT以外のスキルも獲得できる
病院やクリニックの多くはPT業務(リハビリ業務)のみ行っていればOKという場所がほとんどです。もちろん施設内の委員会などはありますが、そんなのは一部です。
高齢者施設ではPT業務意外にもレクリエーションやイベント(お祭りなど)、時にはおむつ交換まで行う施設もあります。
中には「それはPTの業務じゃない」と不快感を示す方もいらっしゃると思います。
けれど相手を楽しませるスキルというのはすごく重要で強いと私は思います。
どうせ運動するなら楽しくやって欲しいですよね。
デメリット
①医学的データが得られにくい
福祉施設では全身状態が比較的安定した方が多いです。さらに福祉施設では医学的情報(血液データやレントゲン写真など)が病院に比べて不足しています。
そうなるとどうしてもそういったデータを中心に業務を組み立てる経験が不足してしまいます。
つまり、血液データやレントゲン、尿の排泄量の結果などを解釈する術が身につきづらくなります。
②急性期に比べリスク管理が甘くなる
①に関連する事ですが、医学的情報を解釈する機会が少ないとどうしてもリスク管理に甘さが出てしまいやすいのです。
また、前述したように状態の安定した方を相手にする事が多いので認識が甘くなります。
急性期の職員は”何か問題が起こることを前提”として動きます。
他の施設では”基本的に大丈夫だろう”という感覚で動いている方が多い印象です。私の肌感なので一概には言えませんが、そこには意識の違いが確かにあります。
ただしこれは全て悪い意味ではありません。
積極的に活動量を増やさなければいけない現場で急性期医療の意識が高すぎると進むものも進まなくなるケースがあります。
畑が違えばニーズも異なるというわけですね。
③若年層の症例機会がない
これはもう施設の特色上は仕方がないことです。
将来的に幅広い年齢層に関わっていきたいと考える人は思い切って職場を変えるか、副業や個人の活動で関わる対象を広げていく必要があると思います。
もちろん、将来的にも高齢者福祉に従事したいという方にはデメリットにもならない項目です。
まとめ
今回は老人保健施設、いわゆる”老健”についてお話しました。
今は地域医療が叫ばれる時代です。そんな中、福祉施設で得られるスキルはとても重要だと思います。
いくつかデメリットな面もお話しましたが、それも自分自身が積極的に勉強すれば十分補う事ができます。
「周りのスタッフはそこまで医学的データと睨めっこしてないよ?」っていう声も聞こえてきそうですが、必要なことは周りに流されず自分で判断して勉強していく姿勢が必要だと思います。
どういった方向性でキャリアを積んでいきたいのか、それは周りではなく自分自身にあります。
将来を見据えて勉強していくことをオススメします。
Ease Upでは学生や新人セラピスト向けに日常の学習やキャリアアップ相談を実施しています。興味のある方はお気軽にお問い合わせください。