【リハビリ業界の都市伝説】PT数年目から小児分野で働くのはもう遅いのか

リハビリ

「小児をやりたいなら新卒からじゃないと難しいね」

PTとして働いている方なら聞いたことがあるでしょう。

私が学生の頃は、そもそも小児関連の就職先は数えるほどしかなかった記憶している。興味はあっても「狭き門」というイメージ。

しかしながら、近年では施設も増えたことで小児分野への就職先は非常に多い。
それにも関わらず、現場のセラピストが足りないという声は頻繁に耳にする。実際にDMなんかでお誘いをいただいたり、人材の紹介を頼まれることも多々ある。

現場からの声に「指導できる人材が非常に少ない」といったものがある。これは当然で、前述のように以前は就職先すら少ない状況であったため十分な経験を積んでいるPTの数は他分野に比べ圧倒的に少ないからだ。

実際、周りの同年代(12年目)に「小児をお願いできない?」なんて聞くとだいたい渋い顔をする。

これは多くのセラピストが小児を“別モノ”と捉えていることではないのか。そのため、実際に興味があっても諦めているセラピストも一定数いるでしょう。

私は、小児に携わるセラピストが増えるには新卒の希望者を増やすのではなく、途中からでも学び直し一定の経験ある人材が参入しやすい環境が必要と考えている。

冒頭に述べた、
「小児をやりたいなら新卒からじゃないと難しいね」という言葉。
それは真実なのか?

まずはこの言葉を疑うことから始め、自分なりの考えを書き殴ってみたい。

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いきなり結論

試験にはなるが、途中から小児分野に参入することは十分可能だと考えている。

今では実際の講習会だけでなくオンラインでも学びの場は増えているし昔に比べて情報に溢れている。

問題は小児から成人まで満遍なく介入できる現場が非常に限られていることではないだろうか。
現状では、転職してどっぷりと環境を変えるか休日にアルバイトとして関わるのが実際ではないかと思う。

それでは以下に私自身の経験も踏まえて考えを述べさせていただく。

応用できる知識は山ほどある

冒頭にも述べたように、躊躇する人の多くが小児を別枠で捉えすぎている気がする。
私自身も新卒の時は急性期に勤め、そのほとんどは高齢者を相手に業務を行ってきた。

実際に小児のリハビリに関わるようになり、ゼロからのスタートだったかと言えばそんなことはない。
もちろん、小児特有の評価や介入方法などは改めて勉強したが今までの経験は想定していたよりも活かされていた。

身体操作や動作の分析、ロジカルに対象を評価したりと基本的な思考プロセスは同じであるはずだからだ。
私たちが行うのはあくまで「理学療法」に準じたものであり、そこに小児や成人といった境界線はそこまで重要ではないと考えている。
PTはよく「“疾患”ではなく“障がい”を見ろ」なんて言うが、それはまさにここでも当てはまる現実だ。

結局は人間の身体

よき聞く意見は他にもある。
「小児はコワイ」というものだ。

この“コワイ”には様々な意味合いが含まれていることと思う。

身体が小さいこともあり、骨折への恐怖を口にする人もいる。
個人的には低栄養で寝たきりの高齢者の方がよほど”コワイ”のではないかと思ったりもする。

“コワイ”の正体は“経験がない未知のコト”という場合が多く、実際に触れ関わっていくことで容易に改善できるのではないかと私は思う。

※一部では常に“怖い”という思いを持つことを美徳として語るセラピストもいるが、“心構え”と上記の意味とを混同している場合は論外であると言わせていただきたい。

結局は勉強するでしょ?

普段の臨床を思い返してほしい。
実に様々な背景の方が訪れるのではないだろうか。

例えば、普段あまり内部疾患に触れることがない現場であっても心臓や腎臓に既往歴があればその特徴を調べ直し、リスク管理に活かしたり運動療法を組み立て直したりするだろう。

ぜひ小児と関わる際も同じ感覚で勉強を進めて欲しい。
もちろん大人に比べて思うようにいかなかったり、激しく泣かれて介入が困難な場面もある。
しかしながら、接し方や誘導方法などは参考書通りにいかず、実際に体験しなければ学べない。

まずは“小児”を異世界の如く捉えることをやめ、同一線上で考えてみてはどうだろうか。

成人と同様、考え方は様々

また別の意見として、
「小児は特殊な技術が必要なんでしょ?」
という質問も良く聞かれる。
これはいわゆる“ボイタ法”や“ボバース法”といった類のものだろう。

このように“〜法”といった技法は理学療法業界で頻繁に耳にする。

けれど思い出してほしい。
脳血管疾患や整形疾患に関わるPTが例外なく“〜法”と呼ばれる技法を駆使しているだろうか?
私の知る限り、答えはNOである。

きちんと評価し、一般的に言われる運動療法の理論に当てはめることで結果を出しているパターンはいくつも存在する。

私はなにも、こういった技法を否定したいわけではない。言いたいことは、基本的な知識と応用で十分に介入することは可能であるということだ。

もちろん、成人と違い種々の動作を獲得前に麻痺を呈しているため考え方や運動療法の捉え方が異なる側面は大いにある。
ただ、勘違いして欲しく無いのは全くの別モノでは無いということだ。
個人的にはパズルのように事象を組み直すことが大切で、一つ一つの要素を見れば成人のソレを当てはめて考えることは容易である場合が多い。

海外で出会ったイスラエルのPT(余談)

PTとして12年ほど活動する中で、違う国のセラピストと現場を共にしてきた。

その中でもイスラエル出身のPTが発した言葉は鮮明に覚えている。
「日本ではそんなに子どもに触るの??」

これは、“徒手療法を中心に行うの?”という意味合いだと理解している。
もちろん徒手療法を行うのは日本に限ったことでは無い。きっとイスラエルでも行われているだろう。
ただ、私があった2人のセラピストは子ども達がより動きやすい環境を作り、好きに動ける状態を作ることに終始努めていた。(例えばウォーカーをクッションやバンド等で調整して少しでも動きやすいポジションを探すといった具合)。
おそらく日本のPT目線では変形や緊張の増加など心配になりそうな場面だ。

ここで言いたいのはどちらが正しいのか、という話ではない。

前述したように症状や置かれた環境、性格も含め様々な背景を持つ子どもたちに対して「絶対的な正解」はなく、必ずしも特殊技法を用いる必要も無いということだ。
評価、実践し試行錯誤を繰り返して介入していくことに子どもも成人も関係ないのではないだろうか。

こうして根本的なことに思いを巡らすと、謎のカテゴリー分けはどこか的外れなように思えてくる。

過去に書いた海外ボランティア記事です

勝手な想い

いつも通り勢いのまま書き殴り、まとまりのない文章が出来上がりました。
賛否あるのは承知の上で、私自身の考えが誰かのきっかけになれば幸いです。

自分が身を置いている状況のせいかもしれませんが、小児も介入できるPTの需要は非常に高まっているように思います。
また、興味はあるけど先に述べたように躊躇してしまうPTが多いのも事実ではないでしょうか。

勉強会や交流会によって小児に関わるPTが増えることを願うばかりです。

また、既に実践しているセラピストが積極的に外へ出て行き普及活動的な働きかけをすることも必要だと思います。
個人的な肌感として、従来の小児分野というのはやや排他的な印象が強く感じられます。(強い責任感からくるものと理解している)
人手が足りないのであれば積極的に外へ働きかけ、参入してくるセラピストを増やしていくことも必要ではないでしょうか。

子どもたちと親御さんが、より快適で安心できる生活の一助となるよう小児のリハビリ業界が盛り上がることを願っています。